働き方改革

ワーママに支持されるイクボスの条件とは?

「イクメン」の派生語として誕生した「イクボス」。始まりは今から5年以上前に遡ります。今では、「イクボス」になるための研修などを行う企業も珍しくないようです。働き方改革関連法案が施行され、改めて注目を浴びている「育児と仕事のバランス」について。「イクボス」という視点から、現在のトレンドをご紹介します。

■イクボスってどんなボス?

「イクボス」とは、部下の育児などのワークライフバランスに理解のある経営者や上司のことを指します。2013年、群馬県の県庁で実施された「イクボス養成塾」から使われるようになったと言われる言葉です。当時、子育てに積極的に関わる男性を「イクメン」と呼んでいて、その派生語として「イクボス」は広まっていきました。
すでに誕生から5年以上が過ぎている「イクボス」。当時は少なかった“育児をしながら働く部下”(ワーキングマザー)も、この数年で働き方の多様化が劇的に加速していますので、“育児をしながら働く部下”を持つ管理職も、もはや珍しいことではなくなっています。
「イクボス」の普及を推進する、NPO法人ファザーリング・ジャパンによると、イクボスには以下のような10ヶ条なる条件があるとのこと。過半を満たしていることが「イクボス」の証になります。
①理解
②ダイバーシティ
③知識
④組織浸透
⑤配慮
⑥業務改善
⑦時間捻出
⑧提言
⑨有言実行
⑩隗より始めよ
どれも大事な条件のように思いますが、特に注目したいのは「⑩隗より始めよ」です。例えば、分かりやすく働く時間について考えてみましょう。「早く帰れ」と部下に声をかけてくれる上司。とてもありがたいですが、その上司自身が深夜まで働いていたらどうでしょうか?部下の多様な働き方を認めるには、上司自らが新しく、自分らしい働き方を実現していないと説得力がないのです。
このように考えると、賛否両論を巻き起こしているという小泉進次郎議員の育休宣言も、意義深いことと言えるかもしれません。政治で日本をリードしてくれる立場だからこそ、ここまで騒がれている「男性の育休取得」を進んで自ら実行する。なぜなら、育休を取らない、育児にも参加しない政治家が、「育休を!」「育児参加を!」と訴えても、あまりに説得力がありません。まさに「隗より始めよ」そのものと言えるのではないでしょうか。

ワーママに支持されるイクボスの条件とは?

■どんどん高くなるイクボス難易度

働き方改革も加速し、さらに働き方が多様化する中、イクボスの難易度も比例して高くなっています。というのも、少し前までワーキングマザーといえば、いわゆるバリキャリで「子どもを産んでも、何としても働き続けたい!」と強い意志を持つ女性が大多数でしたが、共働きが進む中で、夫の給料だけでは生活できない、生活水準を下げたくないなどの理由から、(仕方なく)働き続けている女性も珍しくないからです。つまり、ワーキングマザーの中でも、バリキャリからユルキャリまで、働くことへの意識の差が大きくなっています。ワーキングマザーも多様化が進んでいるのです。
まして、これからは育児は女性だけではなく、男性も参加が当たり前になっていきます。仕事と育児の意識度合いはかなり多岐に渡っていて、仕事9:育児1という人もいれば、その逆もあり。仕事と育児のプライオリティが半半という人もいるでしょう。具体的には、子どもが熱を出したら、必ず休むという人もいれば、配偶者やベビーシッターに頼んで自分は必ず会社に来る人もいる。または当日の仕事の状況によって、休むかどうかを決める人もいます。どれが間違いでどれが正解なのではなく、社員それぞれのライフスタイルであり、育児スタイルなのです。
このように社員の働き方やライフスタイルが多様化すればするほど、理解や配慮が難しくなっていきます。

■こらからのイクボスに求められる条件

難易度がますます高まる「イクボス」ですが、シンプルに大事にすべきなのは①の理解です。理解というのは、育児などについて一般論を学ぶことではなく、部下その人自身をよく見て、聞いて、知ることです。人は性別や年代だけでは計れない、さまざまな個性があり、志向やこだわりがあります。自分と違う側面を見ると、ついつい「間違っている」と感じてしまいがちで、それを直そうとしてしまいます。ひと昔前の、画一的な家庭環境やワークスタイルだった時代ならこれで良かったのかもしれませんが、これからはますます多様化が進んでいきます。多様の時代は、「教育(管理)」ではなく、「尊重」です。
ワークスタイルと、やる気や仕事の質はまったくの別物です。つまり、短い時間しか働けないからといって、やる気がないとか、仕事の質が悪いといったわけではありません。部下のライフスタイルを尊重しつつ、仕事へのやる気やアウトプットの質はそれそのものを(ライフスタイルとは別に)評価することが、これからの「イクボス」には求められるでしょう。

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執筆 山本恭子 ライター
PR系制作会社にて編集経験を積み、総合人材会社の広報部門に転職。2回の出産・育休を繰り返し、同社マーケティング部門に異動。転職サービスの女性向けtoCマーケに携わる。 ここで3回目となる出産・育休を経験。復帰後はワーママ向けキャリア支援の新規事業を社内起業。2018年より夫の転勤に伴い、家族でバンコクへ。駐妻ながら、フリーランスとして日本の仕事をリモートで継続中。

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